よく考えよう

アクセスカウンタ

zoom RSS 第20章 心を結びなおす矯正制度

<<   作成日時 : 2007/11/17 13:12   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 2

ミズーリ州で、1983年に問題ある触法少年の為の小規模な施設のネットワークが作られた。
どの施設も、収容されている少年は36人以下で、少数の職員が付いている。
巨大な施設と違って、少年達は顔のない1触法少年として扱われる事はなく、どの施設でも全員がお互いの名前を「家族」として知り、自分を気遣う大人達と継続的に1対1の繋がりを持つ。
刑務所というよりも家庭に近い雰囲気を持つ施設には鉄格子や独房は無く、ドアも大半は施錠されず、ビデオモニターの監視はあるが、逃亡を防止する設備は殆ど無い。
少年達は10人前後のチームに編成され、自分達で責任を持って規則を守る事になっている。
食事・睡眠・学習・シャワーを一緒に行い、常に少年問題の専門化が監督として2人付添う。
誰か騒ぎを起しても、少年矯正施設にお定まりの懲罰房はなく、手錠による拘束も行われない。
誰かが他人の安全を脅かした場合に安全に抑制する方法として、その少年が落着く迄両手両足を捕まえて床に押さえつけておく事を少年達全員が教えられている。
1日6回、チームのメンバーは車座になり、各々が自分の気持を述べ合う。
更に、皆の注意を喚起したい時や苦情のある時は、チームの誰でも車座の話合いを要求できる。
殆どの話合いは安全や礼儀や敬意に関する事だ。
こうした方法によって、授業・運動・掃除中でも作業を中断して、放置できない感情の問題(無視すれば爆発に繋がる)について話合える。
毎日午後には様々な活動が行われ、少年達は友情・協力・共感を育て、他者の気持を正確に受止める練習をし、コミュニケーション能力や他者に対する信頼を築く努力をする。
こうした事全てが「安全基地」に繋がり、少年達に必要な社会的能力の獲得に繋がる。
カラマズー・モデル
刑罰主義を主張する人々の間で優勢な考え方は、犯罪者は人間として許される範囲を踏越えたのだから相応の苦しみを受けなくてはならないという意見を主張する。
勿論犯罪の程度で区別はあり、囚人には犯罪の重さに応じて日々堪忍ぶべき懲罰に軽重もある。
多くの囚人にとって刑務所の壁の内側は地獄、詰り強い者が幅を利かせ恐怖が支配して、冷酷な残虐性が勝ち、反社会的人格障害者天国であって強い者が偉いのであり、上に立つ為に誰もが闘う、やるかやられるかの世界である。
刑務所という「我−それ」の世界に閉じ込められて、偏桃体は一瞬の油断も無く超警戒態勢を続けなければならず、自分を守る為に他者を全く信頼せず情動的な距離を置き、何時も戦う準備をする状態は、犯罪者の本能を育てるのにこれ以上無い学習環境を提供する。
社会として、長い将来のある10、20代の若者をこうした環境に送り、何ヶ月、何年と過せば、彼らは釈放後に再び犯罪者となり又この忌むべき「学校」に戻ってくるのは目に見えている。
犯罪者を増やすばかりの対処法を止めて、有益な人間関係を通して脳の神経回路を作り直す事が可能であるという神経可塑性の観点から「矯正」の意味を考え直してはどうだろう。
刑務所に収監されている犯罪者の多くは、他者に対する共感や衝動を抑制する能力である社会的知性を司る神経回路に欠陥があると考えられる。
自制の決め手は、偏桃体から送出される怒りの衝動を抑制する眼窩前頭皮質の神経にある。
繰返される犯罪の背景には、前頭前野が十分に活動していないという神経パターンにある。
障害の中心は眼窩前頭皮質から偏桃体へ繋がる回路で、破壊的な衝動にブレーキをかける働きを担う神経回路だ。
前頭前野に損傷を受けた人は、心理学で言う「認知制御」がうまくできない。
特に、強い不快情動で頭が一杯になり破壊的な気持が突上げてきて、自分の意志で思考の方向転換ができず、神経のブレーキが壊れているので、残虐な衝動が野放しになってしまう。
この重要な神経回路は、20才代半ばまで成長と変化を続ける。
神経学的観点から言えば、刑務所に収監されている間に、若者は敵意・衝動・暴力の回路を強化する方向に進み得る一方で、自制や行動を起す前に考える習慣や法を守る能力強化にも進める。
こういう考え方を受けて、2004年カラマズー・グループによる提案がなされた。
まず犯罪を防ぐ対策に力を注ぎ、刑務所での時間を有意義に使い、釈放された人を健全な人間関係の中へ組込み再犯を防ぎ、犯罪を起す危険のある若者が住むコミュニティへのサポートの役割が大きい。
コミュニティの連帯性
「大切にする」「思いやる」というのは、隣人に手を差し伸べる気持を伝える重要な姿勢だ。
例えば、街角にたむろしている少年達が道を通り掛った小さな子供を脅しても誰も何も言わないか、それとも大人が少年達に注意をして親に電話するかとか、空き地にしても、ごみ捨て場同然で麻薬の売人の溜まり場になるか、コミュニティ菜園として近所の人々が楽しむ場所になるかという違いに繋がる。
カラマズー・グループによる試みは犯罪率の低下という成果となって顕れた。
調査の結果、犯罪率には地域全体の貧困レベルとコミュニティの連帯感の2大要素が関係する事が分り、2つ共に欠如すると人種・民族的背景や世帯構成等よりも強力な影響要因と判明した。
調査では、最貧困地域でも、住民の間に強い連帯感が見られる地域では犯罪率が比較的低いだけでなく、若者の薬物使用や10代の望まない妊娠も少なく、子供達の学業成績は高かった。
触法少年の更生プログラム
恐らく受刑者達に最も欠けていると思われる共感能力を発揮し情動をコントロールする脳の回路は、人間の脳の中で1番遅れて成熟するので、若い受刑者は重要な神経回路を刺激して遵法的なパターンに修正する事が時期的に可能であり、更生プログラムにより再犯を回避できる。
それは「創造的思考」と「腐った思考」及び「何も考えない」に基く行動の違いを学ぶ事だ。
怒り・対立・共感・自己管理等に対する基礎的学習を含む学校向けの社会的・情動的学習プログラムを参考にして刑務所用更生プログラムの効果はより向上可能と考えられる。
修復的司法
カラマズーの計画でも、犯罪対策の1つとして修復的司法を重視している。
修復的司法プログラムにおいては、調停者が間に立ち損害を修復する機会を設ける。
具体的には、損害を賠償する・被害者の話を聞く・心から後悔して謝罪する等だ。
修復的司法は情動面に働きかけ、犯罪者は被害者に対する認識を「それ」から「汝」へと改め、犯罪者と被害者の間に情動的な結び付を作らせ、犯罪者の生き方を方向転換させ人間の輪にする。
元受刑者を正道に保つ為の様々なアプローチの中でも、特に有効なのが「多組織的療法」だ。
この療法に要する期間は4ヵ月で、釈放された若者にカウンセラーが影のように付添い、担当する若者を取巻く環境を観察し、力になりそうな存在(友人に相応しい若者・指導的役割を果せる親族・家族同然に若者に気遣う地域コミュニティ)を探し、協力を得て目を光らせる。
日常生活の諸場面(学校・町・家庭・どんな場所で誰と一緒でも)で必要に応じ介入措置を行う。
療法は極めて現実的で、家庭での躾と愛情のレベルを向上させ、問題を起し易い仲間と過す時間を減らさせ、学校の勉強や職場での仕事に確り取組ませ、スポーツをさせる。
何より重要なのは、刑務所から釈放された若者の周囲に気遣う人々や生き方の手本となる人々を集めて健全な人間関係(親・親戚・隣人・友人)を作り上げる事だ。
社会的知性の再教育を目指す更生プログラムが実現できれば、全ての方面にとって望ましい。
目標は1つ、罪を犯した人間を「より狡猾な犯罪者」でなく「より真っ当な人間」にする事だ。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
 少年犯罪を犯してしまった子供たちの矯正については、日本でも少しずつよくなっているのではないかと思うのですが、問題は、卒業して、社会に出てきてからの社会の受取り方に問題があるようにも思います。何か冷たい目で見るような傾向があり、結果的に再犯につながっていってしまっているのではないのでしょうか。
 それにしても、大人たちにも夢がなくなってきている日本の現状を速く打破しないとエライことになってしまうのではないかと心配しています。
楽夢大喜(kitasun)
2007/11/17 17:26
ようこそ楽夢大喜(kitasun)さん。
社会の受取り方というのは、自分達は善だという大前提に立って、受刑者に偏見を持つ人が多い事に尽きるのでしょう。やはり自身の保身の為には人を蹴落としてでもというマキャベリストで日本中が充満しているのかも知れません。社会的知性を発揮する事が当り前の世の中であって欲しいものです。
hbar
2007/11/18 12:53

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
第20章 心を結びなおす矯正制度 よく考えよう/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる